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悠久のモンゴル遊牧民 川田敏章
~生活民具展~
令和3年5月7日(金)~8月8日(日)(金・土・日開館展示)
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ごあいさつ

 初めてモンゴルを訪れたのは1993年のこと。「ゲル」と呼ばれる天幕の中に生活に必要な全てのものを備え、季節ごとに家畜とともに移動する遊牧民の生活は、当時大学生だった私に衝撃を与えた。その後、自然とともに生きる遊牧生活に憧れた私はモンゴルに留学し遊牧民と生活を共にした。

 遊牧民の生活は、家畜の乳や肉を糧として自然の恩恵を最大限に活用する一方で、冬は零下40度にも達する過酷な環境の中で自然の脅威と常に向き合うものでもあった。

夏の穏やかな日差しの中で仲間と酒を飲み昼寝した日、厳冬の中で家畜と共に凍えた日、狼の襲撃から夜通し家畜を守った日、大雪で動けなくなった家畜の死を術もなく見守った日、家畜の出産期に夜通し出産を見守った日。わずか2年の生活の中で、生きるとは何かを学んだ気がしている。

 人が自然と真剣に向き合うモンゴル草原で使われている道具には無駄がない。その一方で、形や色など、厳しい環境で暮らす人々が心豊かに過ごすための知恵が込められ、人智を超える自然への畏怖と祈りが込められている。

 今回展示する物品は、私が遊牧生活で使っていた道具のほか、家族同然となった遊牧民から、日本にモンゴル文化を伝えてほしい、モンゴルを忘れないで欲しいという想いを込めていただいたものばかりである。

 現在もモンゴル草原で使われている道具をご覧いただき、大草原に生きるモンゴル遊牧民の力強い生活に想いを馳せていただければ幸いである。