Araki Syuseikan Museum | 〒468-0014 名古屋市天白区中平5-616 |
東海化石研究会では1983年に地元の知多半島の農業造成工事から世界的にもまれな保存の良い化石を発見し、研究調査を進めて当時なりの報告をまとめました。あれから37年を経て、現在、最新の研究手法によって地元の知多半島に産出するサカナの化石たちが再び脚光をあびています。今回はそんな化石を中心に、魚類の進化にも目を向けて、会員が保有する魚化石コレクションを展示することになりました。魚の辿った道は、私たちが辿った道でもあります。そんな私たちと関係の深い魚類や魚の進化、地元の宝物について、多少なりとも関心を持っていただければ幸いです。
東海化石研究会では1983年に地元の知多半島の農業造成工事から化石を発見し、知多半島に広がる「師崎層群」の化石についてプロジェクトを組んで研究調査を始めることになりました。これが魚類を中心に世界的にも珍しい「深海生物群集」への発見につながりました。見つかったハダカイワシからは、本来腐って化石に残らないような発光器などが保存されていることがわかり、この地域の化石は「ラーゲルシュテッテンの化石(世界的に特に保存状態の良い化石を産出する産地)」とみなされるようになりました。ナマハゲフクロウニやチタヤセサバなど新種もいくつか研究され、その当時は「稀有な保存状態の良い深海生物群集の化石」としてまとめられました。
あれから37年がたち、古生物学の世界では研究者の皆さんのたゆまぬ努力により、多くの新しい知見と新発見が続き目覚ましい進展を遂げてきました。近年、師崎層群でも保管されていた化石から、30年以上の時を経てコシオリエビの仲間が新種(ミズノテングス マキグチマイ)であることがわかり報道されました。長い年月が過ぎても、標本がしっかりと保管されていることでまた新しい謎が解明されていくというダイナミックな知的好奇心の反芻は、博物学の醍醐味といえるものでしょう。これと同じくして、師崎層群の魚化石には発光器のみならず眼の保存やタフォノミー(生物の分解から化石化していく過程作用)に関する非常に有用な情報が隠されていることが、大路先生(名古屋大学)、前田先生(九州大学)、田中先生(金沢大学)らの研究で明らかにされ始めており、新たな視点と進んだ科学的解析手法により師崎層群の化石はまた注目され始めています。これら師崎層群の魚化石を中心に、令和に入っての初めての当会の展示会を、「魚化石コレクション」~魚たちの進化~として企画しました。会員が所有している国内外の化石や標本を集めて展示するとともに、魚の祖先に辿り着く旅も合わせて展示を行っています。
魚類は顎を持たないヌタウナギやヤツメウナギなどの円口類(えんこうるい)、硬い骨を持たないサメ、エイ、ギンザメなどの軟骨魚類(なんこつぎょるい)、反対に硬い骨を持つ硬骨魚類(こうこつぎょるい)に分類されます。硬骨魚類はさらにタイやサバ、フナやコイなど大半の魚類を含む条鰭類(じょうきるい)とシーラカンスや肺魚、そして私たち人類の四肢類(ししるい)を含む肉鰭類(にくきるい)に分かれます。この中で四肢類は魚類から外れ、魚類に含まれない別の系統に分かれていきます。肉鰭類はひれに肉が付いていますが、条鰭類のひれは筋と膜でできているという違いがあります。その他にはすでに絶滅してしまったグループとして、頑丈な骨板に覆われた姿をした板皮類(ばんぴるい)、尾びれ以外のすべてのひれに丈夫な棘を持つ棘魚類(きょくぎょるい)などがあります。
魚類の進化を遡ると、魚類の前には背骨を持たず、代わりに脊索という柔軟な支柱を持つグループに行き当たります。先ずは尾索類(びさくるい)。おいしい東北食材の代表である「ホヤ」の仲間です。イソギンチャクのように岩にへばりついて動かないイメージの強いホヤですが、幼体期にはおたまじゃくのような姿をして尾に脊索を持って泳いでいます。その先に戻ると全身に脊索を持つナメクジウオで代表される頭索類(とうさくるい)にたどり着きます。その姉妹群にはウニやナマコやヒトデを束ねた棘皮動物類(きょくひどうぶつるい)がいました。ウニやナマコが人に近いといわれるゆえんです。また類縁なグループにはギボムシなどの半索類(はんさくるい)もいます。頭索類のさらに先にはサンゴやクラゲの刺胞動物類(しほうどうぶつるい)、もっと先には海綿動物類(かいめんどうぶつるい)、有櫛動物類(ゆうしつどうぶつるい)へと祖先を遡ることができます。
魚の辿った道は、私たちが辿った道でもあります。脊索を持ち、脊椎を手に入れ、一部は陸上に進出して私たちへ。そんな私たちと関係の深い魚類や魚の進化、地元の宝物について、多少なりとも関心を持っていただければ幸いです。
出展者の牧口貴久氏による説明会を予定しています。日程が決まりましたらお知らせします。東海化石研究会メンバーとしても活躍される牧口貴久さん。化石に関して新たな発見できることでしょう。お待ちしております。 |