Araki Syuseikan Museum | 〒468-0014 名古屋市天白区中平5-616 |
水野知枝・荒木定子編集 126頁 A4判 カラー 発行 荒木集成館 発行日 2001年11月3日 「名古屋のやきもの」とは江戸〜昭和期に名古屋市内の窯において作られたやきもののことで、商売としてのやきものと、趣味で作るやきものがあります。 荒木集成館において今まで7回にわたって行われた、特別展「名古屋のやきもの」の集大成として本を出版しました。 展覧会に紹介された作品をすべてカラー図版にて掲載しております。総点数366点、種類・量共に豊富な荒木定子のコレクションを御覧ください。
謝辞 本書の出版にあたり、下記の方々をはじめ、多くの方から協力、ご教示をいただきました。皆様のご支援によって、無事図録を出版することができました。心からお礼申し上げます。(五十音順・敬称略) 財団法人愛銀教育文化財団 淡河俊之 加藤義幸 庄司信州 杉山功 筒井隆彌 前田博 横井利恵(表紙デザイン) 印刷所 株式会社クイックス |
私がはじめて名古屋のやきものを知ったのは、昭和48年(1973)10月2日〜29日、名古屋市鶴舞中央図書館において開催された、瀬戸の加藤豊明先生の『名古屋のやきもの展』の時でした。展覧会を見学させて頂き、名古屋にもこのようにすばらしいやきものがあるということを知りました。江戸、明治、大正、昭和にかけて、武士や陶芸家など、色々な人々が、名古屋のあらゆる場所で、様々な作品を作っていたとは思いもよらないことでした。
昭和53年に千種区から天白区中平5-616に移転して、ミニ博物館から財団法人荒木集成館になった時、館長の考古学だけの展示物では、いずれ種切れしてくるのではと考えました。そこで、名古屋の博物館として「名古屋のやきもの」をできるだけたくさん収集しようと思い立ち、集めはじめました。
収集していく中で、窯の場所や、やきものに関わった人々など、名古屋にあったやきものについて色々な事が判明し、楽しくなっていきました。
収集には皆様方の協力と励ましがありました。編集に学芸員の水野知枝さんが参加してくださり、私の「名古屋のやきもの」の本をまとめる事ができました。色々不備な事ばかりと思いますが、その点はご指導お願いいたします。
荒木定子
名古屋は古くからお抹茶が盛んに行われ、私も子供の頃、お抹茶に饅頭がつくからという理由で、よく相伴にあずかりました。茶碗は、年齢を重ねると共に関心が出てくるものですが、とうとう私もそんな歳になったのだと感じています。
私が荒木集成館を開いた頃から、お客様に扶茶を出すことが多くなりました。開館から8年ほどで天白区に越してきた頃には、私も茶碗に関心が出てきて、「これは○○作の茶碗だ、などと言うようになりました。それまでやきものの収集は、特にテーマを決めて収集していませんでしたが、妻が「名古屋のやきも」を集めることに決めました。そうしてコレクションを続け、当館で「名古屋のやきもの」展を今まで6回行ってきたのです。
江戸時代の作品には、名古屋城内で焼かれた御深井焼きをはじめ侍の作品が多くあります。
そのような侍たちの中には、明治にはいると陶芸家になる者もいました。また瀬戸の陶芸家が名古屋の街に店を構えることもありました。そして、中区上前津の南側には多くの窯が築かれました。しかし、こうしてあったやきものの多くは第二次世界大戦の戦災で廃絶を余儀なくされ、現在は八事窯など一部の窯が残っているのみです。
荒木集成館館長 荒木實
乾はつ(1869-1945)は名古屋の女流陶彫作家である。月谷初子又は乾月谷の名で活動した。
東京で生まれたはつは、12歳で彫刻家小倉惣次郎に彫塑を学び、イタリア人の彫刻家ラグーザに手ほどきを受けた。またその美貌からモデルになることもあったはつの彫刻作品は数々の展覧会で入賞した。
その後、陶芸家真葛香山の門に入り陶彫の技法を学ぶ。備前焼や九谷焼など各地の窯場を巡り、腕を磨いた。大正4年(1915)、愛知郡御器所村(昭和区山脇町)に移住し、大正6年(1917)同村の内田研工所内に、「緑陶房」を設立。夫は茶陶を作り、はつは弟予と共に陶彫を製作た。後に自宅に忍焼窯を築いて、本格的に陶彫や茶陶を焼くようになった。昭和5年(1930)不景気のため廃窯。その後、東春日井郡森山町(守山区守山)の瀬栄陶器でノベルティの原型師の職を得た。昭和7年(1932)、再び瀬栄陶器の敷地を借りて忍焼窯を築いたが、同14年(1939)閉窯した。しかし、その後も作陶活動は続けた。
昭和19年(1944)、病によって八事の名古屋医療養老院に入院し、昭和20年(1945)2月19日に亡くなった。
荒木集成館館長夫人、荒木定子氏が長年かけて集めた「名古屋のやきもの」コレクションの集大成として、本書を出版することになりました。今回改めてこのコレクションを整理したところ、点数や種類の多さに驚かされました。
荒木定子氏は、豊富な数と種類の名古屋のやきものを所蔵する、名古屋有数のコレクターです。中には現存数の少ない珍しい作品などもあり、本書ではじめて目にする方もいるかもしれません。
郷土資料としても価値のある「名古屋のやきもの」を本として刊行することになり、一年かけて準備してきました。私の力不足もあり、完全とはいかない面もありますが、今できる精一杯の力で製作にあたりました。
この本が、名古屋でこれほど多くの人が作陶を楽しんだり、商売として窯を作り、やきものを販売していたということを知るきっかけとなる一冊になれば幸いです。
当館では、これからも展覧会などを通じ、名古屋のやきものの紹介や、研究、調査などを続けていきたいと思っております。今後とも皆様のご協力をよろしくお願いします。
水野知枝